第1話・ラブレターを見に行こう

 その日は、とても寒い、いわば真冬日だった・・・。
 大学の学芸員課程の博物館実習を履修するみっつとラビは中島公園周辺にある渡辺淳一文学館へと見学に来ていた。
 館内を一通り見学した後、そこの学芸員の人からの説明を受けたのだが、その時もラビはみっつの横で得意の真面目なフリをしながら神妙な面持ちで話しに耳を傾けているように振舞っていた。
 そんなラビに対してみっつは、もう慣れた事とはいえ冷ややかな眼差しを送りながら、自身も真面目なフリをしていた。
 そして、説明も終わり、その場で本日は解散となったので、みっつはすぐに出口へ向かおうとした。
 ところが、ラビはとんでもないことを言い出した・・・。
 ラビ 「お~い、もう一回見学しようぜ~!」
 みっつ 「は?なして?さっき、一通り見たじゃん。」
 (普段は全くやる気ないのに、今日は違うな~。というか、キャラが違うべさ!)
 と、みっつは思っていたら、ラビはうきうきした目をしながら、
 ラビ 「いや~、さっき学芸員の人が言っていたんだけど、渡辺淳一が若い時に書いたラブレターが展示しているみたいだろ?さっきは、見逃したから、もう一回行こうぜ~!失楽園の作者だし面白いかもしれないだろ!」
 ラビは、こういう話は決して見逃さない。
 みっつ 「・・・。まぁ、いいけどさぁ。」
 ラビ 「そうこなくっちゃな!じゃあ、行こうぜ!」
 (相変わらずデリカシーの欠片も無い奴だ。さっきまでは疲れきった顔をしていたのに、既に息を吹き返してやがる。確かに、ラビにとって失楽園は、今後の人生の教科書になるであろう作品なので、興味が湧くのも無理はないだろう)
 と、内心、みっつは毒づいていたが、そんなこんなで二人は展示室に着いた。
 ラビ 「あったぞ~!」
 (は、早い!!もう見つけやがった!)
 この時ばかりは、兎がハイエナと化したようである。
 みっつ 「何て、書いてあるんだ?」
 ラビ 「焦るなって!今、読むから。え~と・・・。」
 ラビの顔がどんどん青くなっていった。それを見たみっつは、
 みっつ 「よ、読めねぇ!!」
 なんと、高校時代の渡辺淳一氏の字が達筆過ぎて、二人には解読が不可能だったのだ!
 ラビ 「か、帰るか・・。」
 みっつ 「そ、そうだな・・・。」
 ラビは、本当に悔しかったらしく、博物館を出る迄の間、ずっとラブレターの話をしていた。
 みっつ 「残念だったなぁ。さ、帰るべ。」
 ラビ 「なあ。ちょっと、大通りの方に行かないか?」
 みっつ 「いいけど、何か見るのか?」
 ラビ 「玉ちゃんへのクリスマス・プレゼントを探したいのさ。」
 といいながら、ラビはクリスマス・プレゼント選びという崇高な使命を持つ自分に酔っている様であった。それを、みっつはウンザリした表情で見ていたが、
 (この馬鹿のことだから、何をするか見物するのも一興だべ)
 と、野次馬根性丸出しで、
 みっつ 「行ってみるか~。」
 と、ラビの申し出に承諾したのであった。

 次回は、ラビの人間性の一端が明るみになってしまう、買い物編!ラビの選んだプレゼントとは果たして?第2話「プレゼントを選ぼう!」にご期待下さい!

 ※この物語は事実を元に構成されたノンフィクションです。
           [総監督・原作・監修] 海ちゃん
           [脚本・シリーズ構成] みっつ



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